コラム
「どんなシミでも落とします!」本当にどんなシミでも落ちると思いますか?「法衣のヒダ部分がうまく仕上がっていない」そんな疑問を抱いたことはありませんか?
こちらのコラムでは、法衣や袈裟のクリーニングやシミ抜きを、様々なトラブルから回避するために分かりやすくアドバイスします。
保管について
クリーニングから仕上がった品物を保管する時の注意点として通気性を良くする事が挙げられます。
クリーニング用のビニール包装に入っている場合は必ず出して、たとう紙で保管してください。そして定期的に(半年に1度くらい)、1日4~5時間虫干しすることが望ましいです。
長期間そのままで保管しておきますと、埃が入ったり湿気がこもったりして変色やカビが発生する原因になります。
できる限り、湿気が少ない場所で保管し、風通しを良くして下さい。湿気取りを置かれることも良いかと思います。
なお、防虫剤は複数の種類の防虫剤を使用せず、1つの種類の防虫剤を衣類の上に置いて下さい。この際、防虫剤が直接衣類に触れることがないように注意が必要です。
湿気に注意することで、お客様の大切な衣類も長くご使用いただけます。
ドライクリーニングとは?
洗い方には大きく分けて「水洗い」と「ドライ洗い」があります。
「ドライ洗い」を正確に理解されていない方が多くいらっしゃいますので、ここで説明します。
「ドライ洗い」とは水を一切使わず、石油系などの溶剤で洗うことです。
「ドライ洗い」にもパークや石油系、フッ素などがあります。
利点としては生地を縮まさず、型崩れを起こさないことが挙げられ、油汚れなどはきれいに除去することが出来ます。
よって、正絹の法衣や袈裟に適した洗い方なのです。
よくご家庭で使用されている家庭用洗濯機には「ドライ仕上げ」などの機能が付いているものが多いですが、水を使用している以上、「ドライ洗い」ではありません。
ご家庭での洗濯機では「ドライ洗い」は出来ない、というわけです。
近年、環境に対しての問題が深刻ですが、最近注目されている、「シリコン(化粧品素材)ドライ」は人体にもやさしく、当店でも導入を検討中です。
法衣のヒダについて
法衣をクリーニングに出されて「ヒダがうまく仕上がっていない」「ヒダに狂いがある」といったことはないでしょうか?
宗派や法衣の種類によってヒダの付き方や本数は異なりますが、共通するのは「法衣はヒダの仕上がりが最も重要」だということです。
また「着用しているうちにヒダが取れてきた」ということもあるかと思います。
生地によってはシロセット加工(ヒダのラインが消えないようにする加工)が施されていることがありますが、これは全部の生地で施せる加工ではありません。
また、加工が施されていたとしても着用のうちにヒダは次第に浮いてくることがあります。
当店では、熟練した職人がヒダ部分を丁寧に手仕上げし、ヒダが歪になったり狂ったりしないようにしております。
着用されてもヒダが綺麗に映えてきます。
トラブルを避けるために!
「仕上がってきたら色が剥げていた」「ほつれがあった」など、お客様とクリーニング店との間で様々なトラブルがあるようです。
各店によって技術の差があることは否めませんが、それ以前に品物をお預かりする際に、店舗側が品物の確認を怠っていることが大変多いです。
実際、お客様からお預かりした段階で色が剥げていたり、ほつれがあったり、縮んでいることは多々あります。
しかし、お客様がそのことに気づかずに店舗へ持ち寄るケースがあります。
品物のお預かりの際にこれらを確認するのは、店舗側の義務であり責任でもあります。
これらの確認を怠る店舗は決してオススメはできません。後々のトラブルの原因となってしまいます。
必ず、お預けの際に品物の状態の確認をしっかりと受けてください!
シミについて
よく街中のクリーニング店を見ると、「どんなシミでも落とします!」という宣伝を掲げられている店があります。
最近はネットでも同じような宣伝をちょこちょこと見受けます。
しかし、高度な技術を有する店舗でも「どんなシミでも落とすこと」は不可能です。
落ちるシミも多いですが、落ちないシミもたくさんあります。
シミは年数が経てば経つほど落ちにくくなります。
お客様が「ジュースをこぼしてしまった」「雨にうたれてしまった」などシミを付けた場合は絶対に擦らないようにお願いします!
応急処置で、タオルを衣の下にひいて、別のタオルで叩いて水分をタオルに吸収させて下さい。
但し、シミをタオルで叩く際にはシミの周り(外側)から徐々にシミの中心(内側)へ叩くように心がけて下さい。
最初からシミの中心を叩いてしまうと、結果的に輪ジミとして残ってしまう可能性が高いので、注意してください。
この「叩く」という作業が大切なのです。
擦ってしまうと、生地を傷めてしまったり、色が剥げてしまう原因となってしまいます。
特に正絹は擦ってしまうと命取りですよ!
正絹物は水には弱いですので、取扱いには気を遣い、専門店へお持ち頂くのがベストです。
お客様の方で、生地が判別できない時も下手に触らず、専門店へお持ちより下さい。
また、撥水加工(パールトーン加工)をし、汚れやシミから守るのも1つの手段です。
買い替えの時期について
当店はもちろんクリーニング店ですので、汚れやシミの除去に全力を注ぎますが、長年使用された品物は生地が劣化したり、変色しているものも多いです。
「先代から使用しているもので愛着がある」「できる限り長く使用したい」などのご要望もあるかと思います。
クリーニングやシミ処理で解決しなかったものは、漂白や染め替えなどの手段もありますが、手段も限界があります。
特に生地が劣化した品物は、このような手段を以ってしても状態が良くなるわけではありません。
生地が劣化した状態でクリーニングやシミ処理を行っても、余計に状態が悪くなる一方です。
夏物の正絹紗の生地は長年使用すると、汗による変色や生地の伸縮が著しくなります。
このような場合は買い替えをオススメします。
お客様からのご要望があれば、当店では責任を持って、各宗派専門の信用のおける法衣店様をご紹介させて頂きます。